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「命」はつながり続ける
講談社「フライデー」2005年10月30日号掲載


 自然を見続けていると、ひとつとして余分な「命」がないことがわかる。 たとえば、サバンナでシロアリが作る巨大なアリ塚。その中に細くて長い「通路」が作られることで、土壌中に空気が入り、シロアリ以外の生物も地面の中で生きていられる。また、数十万、数百万のシロアリが倒木を素早く食べてくれることで大地にはいつでも太陽光が届くのだ。もしシロアリがおらず、倒木が幾重にも折り重なってしまったなら、太陽光を浴びられない植物は、ごく短時間で枯れ果ててしまうだろう。
 ジャングルやサバンナで大切な役割を担っているのはシロアリだけでない。マメ科に属しているアカシアの木は、空気中の窒素を取り入れ、根から大地に放出することで、窒素を必要とする他の植物の生長を助けている。その生態で茶化される糞コロガシだが、幼虫は草食動物がまき散らす大量の糞を食べることにってウィルスの拡散を防いでいる。メ嫌われ者メのハイエナも同様で、腐肉をも食べることで大地を清潔に保っている。
 あらゆる生命が何らかの形でほかの命を生かすために生きている。また、ひとつの命が次の命に引き継がれることで、自然循環は守られているのだ。
 助け、助けられる命、引き継ぎ、引き継がれる命。自然界に不要な命など、ひとつとして存在しない。
 こうしたシステムを35億年あまり維持し続けてきたのが地球だ。この事実を私たちは忘れかけているのではないか。


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