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砂漠が止まらない
講談社「フライデー」2005年9月16日号掲載


 世界最大の砂漠「サハラ」南部は「サヘル」と呼ばれる土地。ここが今、地球上で最も深刻な砂漠化に直面している。
 その昔、ラクダを連ね「サハラ越え」を繰り返したアラブ商人は、緑溢れるこの一帯にたどり着いた時、「生きて」砂漠越えができたことを心から神に感謝し「サヘル(緑の岸)」と名づけた。
 70年代までは緑豊かなサバンナが続いていた。木が生い茂り、豊かな水源には動物たちも集まっていた。だがそこは今、小麦粉より細かい砂が絶えず吹き荒れる土地。湖は縮小し、木も点在するのみ。家が埋まるのを防ぐため「雪かき」ならぬ「砂かき」が村々の日課だ。気温は50度まで上がり、少しでも油断すると、わずかな水を求め、ハエがヨタヨタと目や口や鼻を目指して飛び込んでくる。この場所ではハエまでも乾ききっていた。
 村でスルタンに会った。スルタンとは君主、つまり「王様」のことで、彼の言葉は、村の「掟」でもあった。
「もう3年も雨が充分に降っていない。あと1年、この状態が続けば、多くの人がこの村を捨てるだろう。この環境は人間が生きる限界をとっくに超えている。私でさえ彼らを止めることができない」
 地球の砂漠化が、日本人の想像を遙かに超えたスピードで進行しているのは、間違いない。


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