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象密猟とアフリカの苦悩
講談社「フライデー」2005年9月9日号掲載


 ケニア最大の野生保護区「ツァボ国立公園」には、かつて3万5千頭のアフリカ象が生息していた。 だが、70年代?80年代、ロケット砲や小銃で武装した密猟団の出現により、5千頭にまで激減。彼らが狙っていたのは莫大な富を生む「象牙」だった。
 長さが2メートルを超えることもある門歯「象牙」は、それ自体の重量を支えるため、頭部深く、目の近くまで延びている。そのため密猟者は、銃殺したあと、目の脇で大ナタを振り下ろし、鼻もろとも切り落とす。すべては金のためなのだ。
 象はテリトリーに密猟者が侵入すると、独特の音声で何キロも離れた仲間にその事実を伝える。また仲間が自然死した場合、象牙目当ての密猟者によって死体が弄ばれないよう、遺体から象牙だけを引き抜き、踏みつけ、石にぶつけて砕くこともある。象牙が密猟者を惹き付けることを、象は理解しているわけだ。 89年、ワシントン条約により象牙の売買は禁止された。ツァボ国立公園でも警備が徹底し、頭数は1万397頭(04年)まで回復した。だが、より巧みになった武装密猟団が公園内の象を狙う事実は変わっていない。
 灼熱の大地ツァボ国立公園。この場所で今春、一頭の印象的な象と出会った。強い力を秘めた目からひと筋、涙のようなものを流す象。
 もしかしたら・・・と思った。その涙は殺害された仲間への、切なく、やりきれない思いなのかもしれない、と。 


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